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10 アナフィラキシー

アドレナリンの自己注射製剤のエピペンというものがあります。
アナフィラキシーの時の第一選択薬はアドレナリンの筋肉注射になりますがアナフィラキシーは症状が急激に進行することもあり病院に来るまでの時間に命を落としてしまうこともあります。アナフィラキシーのときにステロイドや抗ヒスタミン薬などのアレルギーを抑える薬を内服しても効いてくるまで時間がかかるため残念ながら緊急時の応急処置としての効果は期待できません。そのため患者さん本人がイザというときにご自身で使えるようにエピペンというご自身で太ももに筋肉注射をすることができる製剤があります。

特にハチ毒やアニサキスアレルギーによるもの、食物依存性運動誘発性アナフィラキシー、原因が特定できていないアナフィラキシーの場合は今後も完全に回避することが難しい場面もあるため非常に良い適応と考えております。もちろん原因が特定された食品であっても誤食というリスクは常にあるため基本的にはアナフィラキシーを起こしたことのある患者さんはエピペンを持参することをおすすめします。

処方するときは院長から実際の使い方について実技指導をさせて頂きます。
自分で注射をするというと難しいイメージを持たれる方も多いですが私自身が地域の中核病院に勤務をしていたときは若い方から後期高齢者の方まで幅広い年代の方にかなりの数のエピペンを処方しておりましたが実技指導をさせて頂いた方々は全員使えるようになっておりました。本物のアドレナリン薬液入りのペンの他に練習用のペン(トレーナー)も入っておりますので充分に練習することができます。エピペンを処方した患者さんの中で何人かはその後もアナフィラキシーを起こしておりますが、そのような患者さんたちもエピペンをご自身で使って応急処置をすることができております。

なお、アナフィラキシーのときにエピペンを使用することはあくまで応急処置です。エピペンを使用後にはいったん症状は良くなりますがその後は医療機関を受診してください。二相性反応といいますがアナフィラキシーを起こしてから48時間以内(長い方で72時間以内)に遅発相のアナフィラキシー症状を起こすことがあります。頻度としては成人で23%,小児で11%に発症すると報告されております(Brown SG. J Allergy Clin Immunol. 2013)。

冒頭で申しあげたとおりアナフィラキシーの治療の第一選択はアドレナリンの筋肉注射です。これはわが国独自の考え方ではなく国際的にも共通です(WAO :world allergy organization)のガイダンス2022)。アナフィラキシーの症状は急激に進んでいくものがあり呼吸停止もしくは心停止までの中央値は薬物の場合で5分、ハチ刺されで15分、食物の場合で30分となっております(Pumphrey RS Clin Exp Allergy 2000)。呼吸低値や心停止の状態からもし救命されたとしても後遺症(蘇生後脳症など)が残る恐れがあります。これほど短期間に急激に進行する症状には内服薬の効果は期待できません。

市販後調査でアドレナリンは筋肉注射をする分には血圧の急激な上昇や危険な不整脈などの大きな副作用はほとんどないことがわかってきております(アレルギー2013;62:144-54)。ただし上下逆さに持って指を刺さないようすることは注意が必要かと思います。使い方を忘れないように定期的な練習が必要ではありますし、アナフィラキシーはいつ起こるかわからないためエピペンは常に持参が必要であることやエピペンには使用期限があり、その都度エピペンの亢進が必要であるなどいくつか注意点はありますがこの点はクリニックでなるべくわかりやすく丁寧に説明いたします。