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05 骨密度が低い
(骨粗しょう症)

骨密度が低い、骨粗しょう症の疑いがあると言われたことはないでしょうか?

骨が弱くなってしまうと本来は骨折をしないような軽微な外力でも骨折しやすくなってしまいます。骨折した部位によっては今まで通りの日常生活が思うように行えなくなってしまう恐れがあります。

例えば足の付け根(大腿骨近位部)や背骨(特に腰椎)などは骨が弱くなってきた方に特徴的な骨折部位になりますが、これらの場所が骨折してしまうと特に大腿骨近位部などはそのまま寝たきりになってしまう恐れがあります。
今まで通りの日常生活の動作(ADL)が以前より落ちてしまうと誤嚥を起こしやすくなったり、体力が低下したり床ずれ(褥瘡)ができやすくなったりと、単に整形外科的な問題にとどまらず全身に様々な悪影響が出てきます。
(このため大腿骨近位部の骨折後の数か月は死亡率も大きく上昇すると報告されております)

また日本人では平均寿命と健康寿命との間で10年ほどの開きがあり、そこをいかに縮めるかというのが課題になっているわけですが骨粗しょう症というのもその一つの大きな原因となっております。

当院では地域の皆様方の健康寿命を延伸するということを理念の一つに掲げており骨粗しょう症の患者さんに対しても積極的に治療に取り組んでいこうと考えております。

骨粗しょう症の診断には腰椎と大腿骨での骨密度の測定が「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」で推奨されております。当院ではGE社製の骨密度測定器で腰椎、大腿骨の骨密度を患者様に体位を変えて頂くことなく一連で測定することができます。
病院や専門施設でも使われている骨密度測定器になります。

他の部位の骨ではなく直接、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定することでより正確な骨粗しょう症の診断や治療後の効果判定を行うことができます。
また腰椎と大腿骨の骨密度を姿勢を変えることなくそのままの同じ姿勢で骨密度を測定することができますので検査を受けられる患者様の負担も少なくなります。

ちなみに骨の強さというのは骨密度と骨質で規定されます。だいだい骨密度によるものが70%、骨質によるものが30%と言われております。
一般的には骨密度を測定してYAM値(若い成人の骨密度と比べ何%の骨密度まで低下しているか)が70%以下を骨粗しょう症と診断します。ただし前述の通り、骨の強さは骨密度以外に骨質の影響も受けるので椎体骨折や大腿骨近位部骨折があれば骨密度によらず骨粗しょう症の診断になります。
またその他の脆弱性骨折(例えば手を付いて折る骨折等)を認める場合は骨密度が80%未満でも骨粗しょう症の診断となります。

この骨粗しょう症の診断基準を満たした方は薬物療法を開始した方がよいものと考えられます。

また骨粗しょう症の薬物治療の開始基準では骨密度がYAM値で70~80%の方においても大腿骨近位部骨折の家族歴のある方やFRAXというWHOが定めた10年間の骨折リスクを評価するツールで15%以上となった方も含まれます。

骨粗しょう症の薬物治療は大きく骨吸収抑制作用を持つ薬剤、骨形成を促進する作用を持つ薬剤、その両方の作用をもつ薬剤に分類されます。
骨は硬いそのままの形でずっと同じく一定であるというイメージを持っている方も多いと思いますが実際にはそうではなく、骨吸収と骨形成を繰り返しながら毎日少しずつ造り替えられています。

つまり私たちが気付かないところで骨を溶かす、骨を造る、骨を溶かす、骨を造るという骨の新陳代謝、骨代謝を繰り返しているということになります。
この骨粗しょう症の診断基準を満たした方は薬物療法を開始した方がよいものと考えられます。
また骨粗しょう症の薬物治療の開始基準では骨密度がYAM値で70~80%の方においても大腿骨近位部骨折の家族歴のある方やFRAXというWHOが定めた10年間の骨折リスクを評価するツールで15%以上となった方も含まれます。

骨粗しょう症の薬物治療は大きく骨吸収抑制作用を持つ薬剤、骨形成を促進する作用を持つ薬剤、その両方の作用をもつ薬剤に分類されます。
骨は硬いそのままの形でずっと同じく一定であるというイメージを持っている方も多いと思いますが実際にはそうではなく、骨吸収と骨形成を繰り返しながら毎日少しずつ造り替えられています。

つまり私たちが気付かないところで骨を溶かす、骨を造る、骨を溶かす、骨を造るという骨の新陳代謝、骨代謝を繰り返しているということになります。

骨粗しょう症の大きな原因に加齢と性ホルモンの減少が挙げられます。
たとえば閉経後の女性は骨吸収が亢進します。
女性ホルモンのエストロゲンが骨吸収を抑制する働きがあり、この女性ホルモンが閉経前後で急激に減少することで骨吸収の抑制が低下、すなわち骨吸収が亢進することになります。
この場合は骨形成する力も保たれてはいるのですがそれ以上に骨吸収が亢進するため骨代謝が「高回転型」の骨粗しょう症となります。

女性ほど短期間での急激な性ホルモンの減少を起こさないものの男性における性ホルモンの減少、男性型更年期においても同じような骨代謝への影響が出現します。

また加齢に伴い骨代謝自体が低下してくると、骨吸収する力も低下しますがそれ以上に骨形成をする力も落ちてくるという状態になります。
これが骨代謝の「低回転型」の骨粗しょう症となります。

その他、加齢その他の原因に伴い腎機能が低下して慢性腎臓病(CKD)と呼ばれる状態になるとCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)という状態となります。腎機能が低下すると尿中へのリンの排泄が抑制され、そのためFGF23というリンの排泄を促すがビタミンDの活性化を抑制するホルモンが増えたり、副甲状腺ホルモンが二次的に多く分泌されるなどで複数の方向から骨代謝への悪影響が出てきます。

骨吸収を抑える作用機序の薬としてはビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤であるプラリア®があります。
どちらも骨吸収の働きを担う破骨細胞の働きを抑える作用があります。
RANKLとは聞きなれない言葉だと思いますが破骨細胞への分化を促す因子のことで骨吸収の働きを担う破骨細胞の発現を誘導し活発にさせる作用があります。このRANKLに対する抗体製剤であるプラリアを半年に1回皮下注射で投与することで破骨細胞への分化を抑制→骨吸収を強く抑制することができます。

また骨形成を促す作用機序の薬剤としてはテリパラチドの自己注射製剤(テリボンオートインジェクター®)や、骨形成促進・骨吸収抑制両者の作用機序を併せ持つイベニティ®による治療にも当院では対応いたします。特に骨粗しょう症の程度が強かったり骨折リスクの高い患者さんにはこれらの薬剤の対象となる場合があります。

注意する点としては骨吸収抑制作用のある薬(ビスホスホネート製剤やプラリア®)や両方の作用を併せ持つイベニティ®を使っている患者様が抜歯を行うと顎骨壊死という副作用のリスクがあります。
顎骨壊死は一度起きてしまうと難治性のことも多く、そのため起きてからどうこうというよりも発症しないように気を付けて骨吸収抑制作用を持つ薬剤を使っていくということが重要になってきます。
そのため抜歯する予定がある方や抜歯する可能性のあるような虫歯がある場合はこれらの薬は用いることができず歯科との連携が必要になってきます。

また血液中のCa(カルシウム)の値の変化にも注意が必要です。
骨吸収抑制作用の強い薬剤を用いるときは投与前や投与後の定期的な血液中のCaの値のチェックが必要となります。

また副作用の低Ca血症を予防するためにCa製剤、ビタミンD製剤を内服して頂く場合もあります。

例えば骨吸収抑制作用の強い皮下注射の抗体製剤のプラリア®で治療する場合はデノタス®という専用のカルシウム・ビタミンDの合剤の薬を内服していただくことになります
(プラリア®の皮下注自体は半年に1回ですがデノタス®は毎日内服して頂く必要があります。)

他に留意する点としては骨形成を促す薬剤に関しては生涯において使用できる回数、期間には制限があります。

テリパラチド製剤のテリボンオートインジェクターは生涯で24ヶ月、つまり2年までの投与期間となります。テリボンの自己注射は週に2回なので合計208回までの投与回数となります。
何らかの理由で止むを得ず治療を一時中断した場合でもこの投与期間と回数を超えることはできず上限を守る必要があります。
動物実験レベルで骨肉腫の発症率が増えたというのが理由のようです。
しかしヒトにおいてはテリパラチド製剤の使用で骨肉腫が自然発生率と比べ増殖しなかったという報告もあり(Alicia Gilsenan et al. J Bone Miner Res. 2021 Feb)今後この2年間の上限が変更になる可能性もなくはないですが少なくとも現時点では期間、回数に上限がありこのルールの中で治療を行っていく必要があります。

最後に生活習慣病と骨折リスクについて説明させて頂きます。
先ほど骨の強さは骨密度70%、骨質30%で規定されると説明させて頂きました。
糖尿病の患者さんは骨密度は保たれていても骨折のリスクが高いことが報告されています。
(Schwartz AV. Bone 2016; 82:2-8)
AGEs(終末糖化産物)の産生、蓄積などによる糖化ストレスで骨質が低下し骨の中の細かい構造が劣化してくるなどで骨密度が保たれていても骨折リスクが上昇してくるといわれております。
また糖尿病の患者さんは合併症としての自律神経障害や低血糖などにより転倒のリスクも高くなるといわれております。

つまり糖尿病がある患者さんは今まで骨密度の低下や骨粗しょう症と言われたことがなくても骨折のリスクには注意する必要がある可能性があります。
また骨粗しょう症と糖尿病を合併している患者さんはどちらか一方だけを治療すればよいのではなく、より総合的な管理を行っていく必要があります。