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02血糖が高い、糖尿病

健康診断や病院での採血で「血糖が高め」と言われたことはないでしょうか?

糖尿病は予備軍まで含めると40才以上の3人に1人が該当するとも言われております。
血糖は生きていくために必須なものですが高過ぎる血糖は逆に体に悪影響を及ぼします。
高血糖が長い期間続くといわゆる糖尿病の三大合併症と言われる眼、神経、腎臓への悪影響がでてきます。これらは細小血管障害と言われるものです。これとは別に狭心症、心筋梗塞や脳卒中といった大血管障害も糖尿病患者さんには一般の方よりも多く発生することがわかっております。

血糖が高い状態は血管の壁を傷めて動脈硬化を進行させてしまいます。
しかも恐ろしいことに心筋梗塞、脳卒中といった大血管障害は糖尿病の予備軍の時点ですでにリスクが上がっていることが判明しております。つまり糖尿病には至らなくても血糖が少し高めという時点で既に血管には負担がかかり始めて動脈硬化が進みやすくなっており、心筋梗塞、脳卒中になる確率が高まっているということになります。そのため健康診断などでは糖尿病にはまだ至らなくてもその予備軍の段階で受診を求められることもあります。

これを厳し過ぎると感じられる方もいらっしゃると思いますが、糖尿病への進展を未然に防ぐという意味の他に「既にこの時点で動脈硬化のリスクが始まっている」という意味もあると思います。

糖尿病には1型と2型がありますが、一般的に思い浮かべる生活習慣病としての糖尿病は2型になります。日本では95%以上の糖尿病患者さんがこの2型に当てはまります。
生活習慣病といっても2型糖尿病でも遺伝的、体質的な要因も大きいので、遺伝的素因に生活習慣が組み合わさって発症するというのがより正確な表現となります。
また糖尿病という名称が偏見に結びついているのではないか、ということで糖尿病の名称を変更するという動きもありますが便宜上ここでは糖尿病という名称で説明を進めております。血糖を下げるホルモンは体の中で唯一インスリンだけです。
血糖を上げるホルモンは数多く体内には存在しますが下げるホルモンはインスリンしかありません。

インスリンは膵臓で作られます。日本人を含む東アジア人は人種的、遺伝的に膵臓のβ細胞というインスリンを分泌する細胞の働きが弱いことが判明しております。
また内臓脂肪が多くなってくると同じ量のインスリンが出ていてもインスリンの効きが悪くなってしまいます。このことをインスリン抵抗性といいます。
インスリン抵抗性が強くなると同じ量の血糖を下げるのにより多くのインスリンを分泌することになり、これが長く続くと膵臓のβ細胞が疲弊してしまいます。
インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が組み合わさって2型糖尿病が発症します。

同じ2型糖尿病でも欧米型と日本人の2型糖尿病では肥満の割合が大きく異なります。
欧米の2型糖尿病はインスリン抵抗性に起因する要素が強く肥満合併の糖尿病の方が多いのですが、日本人の場合は人種的な問題や遺伝的背景で小太り程度もしくはやせ型で2型糖尿病に至ってしまう方もいます。もちろん日本人でも欧米型の高度肥満を合併した2型糖尿病の方もいます。つまり一言で2型糖尿病といってもインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の関与の度合いは患者さん毎に異なってきます。

2型糖尿病の治療の基本は食事療法・運動療法です。
薬物療法を行うにしても食事運動療法は並行して頑張って頂く必要はあります。薬物療法に関しては幸いなことに近年糖尿病の内服薬・注射薬ともに著しく進歩しております。

低血糖のリスクはほとんどなく使える薬も多くなってきております。
内服の糖尿病の薬(経口血糖降下薬)に関しても従来のビグアナイドやDPP4阻害薬の他にSGLT2阻害薬や経口GLP-1受容体作動薬も出てきたことで注射に至るまでの選択肢が大きく増えたと思います。
結果的に注射の薬にまで至らずに糖尿病のコントロールが改善する方も多くいらっしゃいます。
このことは患者さんにも朗報だと思います。

特にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は糖尿病の改善効果もさることながら心臓や腎臓などの臓器保護効果があるという点でも大きな特徴です。
SGLT2阻害薬に関しては糖尿病の薬でありながら高齢者に多い拡張障害の心不全(HFpEF)や狭心症、心筋梗塞の一次予防でも予後改善効果が認められた最初の薬であります。

拡張障害の心不全とは患者さんの数は多いものの今まで有効な治療法がなかった疾患でしたのでSGLT2阻害薬の登場というのは医学の大きな進歩だと思います。

また内服薬をいくつか組み合わせても血糖のコントロールが付かずに注射薬になってしまう場合でも今はインスリンの前にGLP1受容体作動薬やGLP1/GIP受容体作動薬というものが使えるようになり注射薬に関してもインスリンに至るまでの選択肢の幅が大きく広がったと思います。

糖尿病に関しても極力患者さんの負担の少ない、日々の生活スタイルになるべく合わせた治療を一緒に検討して参りますので外来でご相談頂ければと思います。